• 最近様子が変わってきた?慢性腎臓病など、高齢猫に見られやすい症状と病気

    はじめに

    猫が7歳を過ぎると、人間でいえば40代半ば。10歳を超えれば立派なシニア猫です。

    「最近、お水をよく飲むようになった」「夜中に鳴くことが増えた」など、ちょっとした変化はありませんか?

    高齢猫には特有の症状や病気が現れやすくなります。早期発見が愛猫の健康寿命を延ばす鍵となりますので、注意すべき症状とその背景にある病気について知っておきましょう。

    高齢猫に見られやすい7つの症状

    1. お水をよく飲む・おしっこが多い

    水を飲む量が明らかに増えた、トイレの回数や尿の量が多くなったという症状は、高齢猫で最も注意すべきサインの一つです。

    考えられる主な病気:

    ⚫︎慢性腎臓病:高齢猫の最も多い病気の一つ。腎臓の機能が徐々に低下し、老廃物を濃縮して排泄できなくなるため、薄い尿が大量に出るようになります。その分、脱水を補おうと水をたくさん飲むようになります。

    ⚫︎糖尿病:血糖値が高くなり、尿に糖が漏れ出すことで多飲多尿になります。

    ⚫︎甲状腺機能亢進症:甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、代謝が異常に活発になることで、水をたくさん飲むようになります。

    2. 夜泣きをする

    以前は静かだったのに、夜中に大きな声で鳴くようになった場合、単なるわがままではない可能性があります。

    考えられる主な原因:

    ⚫︎甲状腺機能亢進症:落ち着きがなくなり、夜間も活動的になります。

    ⚫︎高血圧:頭痛や不快感から鳴くことがあります。

    ⚫︎認知機能不全症候群(猫の認知症):昼夜のリズムが乱れ、夜間に不安や混乱を感じて鳴くことがあります。

    ⚫︎痛みや不快感:関節炎や他の痛みを伴う病気が原因の場合もあります。

    3. 痩せてきた

    体重減少は、見た目では気づきにくいことがあります。定期的に体重を測り、触って体格を確認する習慣をつけましょう。

    考えられる主な病気:

    ⚫︎甲状腺機能亢進症:食欲は旺盛なのに痩せていくのが特徴です。代謝が異常に高まり、エネルギーを過剰に消費します。

    ⚫︎慢性腎臓病:食欲低下や栄養の吸収不良により体重が減少します。

    ⚫︎糖尿病:インスリン不足で栄養が細胞に取り込めず、筋肉が分解されて痩せていきます。

    ⚫︎腫瘍:リンパ腫などの悪性腫瘍は体力を消耗させます。

    4. 食欲がない

    食欲不振は、猫にとって深刻な症状です。24時間以上食べない場合は、動物病院を受診することを考えましょう。

    考えられる主な原因:

    ⚫︎慢性腎臓病:老廃物が体内に蓄積し、吐き気や胃腸障害を引き起こします。

    ⚫︎口内炎・歯周病:口の中の痛みで食べられなくなります。高齢猫では口腔内疾患が非常に多く見られます。

    ⚫︎消化器疾患:膵炎や炎症性腸疾患なども食欲低下の原因になります。

    5. 食餌をよく吐く(もどす)

    猫はもともと吐きやすい動物ですが、頻繁に吐く場合は病気のサインかもしれません。

    考えられる主な原因:

    ⚫︎慢性腎臓病:老廃物が蓄積すると吐き気やむかつきの症状が出やすくなります。

    ⚫︎甲状腺機能亢進症:消化管の動きが速くなり、嘔吐しやすくなります。

    ⚫︎炎症性腸疾患:腸の慢性的な炎症により、嘔吐や下痢が見られます。

    ⚫︎毛球症:グルーミングで飲み込んだ毛が胃腸に溜まって吐きます。高齢になると腸の動きが悪くなり、毛球が排出されにくくなります。

    6. 便秘がち

    高齢になると腸の動きが鈍くなったり、後足の筋肉低下で踏ん張りがきかなくなったりすることで、便秘になりやすくなります。

    考えられる主な原因:

    ⚫︎脱水:慢性腎臓病などで脱水状態になると、便が硬くなります。

    ⚫︎運動不足:関節炎や筋力の低下で活動量が減ることで腸の蠕動運動も低下します。

    ⚫︎関節炎:トイレに入る姿勢が痛くて、排便を我慢してしまうことがあります。

    ⚫︎食餌量の減少:いろんな症状により食べる量が減ってしまうことで便の量が減り、便秘のようにみえる。

    定期的な健康チェックの重要性

    高齢猫は少なくとも年に2回、できれば3~4ヶ月に1回の健康診断が推奨されます。血液検査、尿検査、血圧測定などで、症状が出る前に病気を発見できることもあります。

    特に慢性腎臓病は、症状が現れたときには腎機能の75%以上が失われていることが多いため、早期発見が非常に重要です。また、甲状腺機能亢進症は治療により改善が期待できる病気ですので、適切な診断と治療開始のタイミングが猫ちゃんの生活の質を大きく左右します。

    まとめ

    高齢猫に見られる症状の多くは、「年のせい」と見過ごされがちですが、実は治療や管理が可能な病気のサインであることが少なくありません。日頃からその子の様子をよく観察し、「いつもと違う」と感じたら、早めに獣医師に相談することが大切です。

    猫ちゃんとの時間は何物にも代えがたいものです。適切なケアと早期発見で、シニア期を健やかに過ごせるようサポートしていきましょう。

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WRITER 武波 直樹

よつば動物病院 / 院長

山口県出身。1980年生まれ。北里大学卒業後、岡山・神戸の動物病院で延べ3万件の診察と2000件以上の手術を経験。末期の動物を「家で看取りたい」という飼い主の声に応えたいとの思いから、2017年、近畿圏で初の往診専門動物病院「よつば動物病院」を開業。訪問診療はのべ1万3千件を超える。飼い主と動物の「その子らしい時間」を支えることを信条としている。
神戸市獣医師会所属、往診獣医師協会理事、日本獣医循環器学会所属、日本ペット栄養学会所属